記憶の宮殿なんて脳内に持てないから、外部に記憶。


by sakanapo

スティーブン・キング「幸運の25セント硬貨」

幸運の25セント硬貨
スティーヴン キング Stephen King 浅倉 久志 / 新潮社
ISBN : 4102193367






・なにもかもが究極的
「デスノート」の能力を持つ人間がいたとしたら?
そんな超能力者の生活と苦悩、成長を描いた作品。
「週越しの金はもたねぇ」と江戸っ子ばりに余った給料を
捨てさせられる意味に気づく瞬間が愕然もの。
あくまでデスノートは道具。そう、誰かにとっての道具なのです。
「アトランティスのこころ」のテッド老人と同じく、主人公は
ダークタワーの破壊者(ブレーカー)側で働いているようですが、
言われなければ分からないくらいさらりとしてるので独立した
作品として楽しめます。

・L・Tのペットに関する御高説
ペットって必ずしも世話してくれる人になつくわけじゃないんだよねー。
相性ってあるものです。社交辞令が効かないだけに、なつかない
人間側のわだかまりも深い。ラスト以外はなさそうでありそうな話。
途中までおもしろおかしく読んでたけどラストがひどく悲しいな。
キングの朗読聞いてみたい!

・道路ウイルスは北にむかう
「変化する絵画」もの。キングの正統派ホラー短編って感じ。
目新しさはないけど、彼の怖がらせ手腕を堪能できます。
主人公の作家の描き方はすごく自分のパロディぽいけど
ファンに接する笑顔の裏は…ってあたりはどのへんまで
計算して書いてるんだろうな、と変に勘ぐっちゃった。

・ゴーサム・カフェで昼食を
和訳は「ゴッサム」にすべき?キングがバットマンを意識しないで
この名前つけたとは思えないんだけどなー。給仕頭の皮肉なウィンクを
こんな話にしたてあげちゃうところが彼らしいというか。
給仕頭の脈絡のないキレぶりと、壊れかけた夫婦が極限状況に
追い込まれて絆が蘇る・・・わけもないあたりが乾いた笑いを呼ぶ。

・例のあの感覚、フランス語でしか言えないあの感覚
=deja vu(既視感)のこと。
永遠に続く悪夢の中に落ち込んだ女性の、かなりイヤーな話。
無間地獄を書いた、という解説を見てなるほどとは思うけど
地獄に落ちた(あるいはそう信じる)原因はやっぱ
アレなんですか?うーんキリスト教文化だー。
この作品に限らずなんだけど、キングって夫婦の間で
相手の機嫌が悪くなっていく予兆を感じた時の微妙な
空気感の表現がうまい。

・一四〇八号室
キング楽しんで書いてるなーというのが感じられる作品。
部屋に入って以降の描写とかノリノリじゃないすか?
ホテル支配人の「部屋に泊まるの止めたいのか因縁話語りたいのか
どっちなんだよ!」的な長話も面白い。
ちなみにマイクを助けるミシンのセールスマンの姓がディアボーン。

・幸運の25セント硬貨
「例のあの感覚~」のいい方向版?個人的にはしみじみとした
いい話というよりちょっと怖かったんですが・・・。
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by sakanapo | 2006-05-29 07:47 | スティーヴン・キング