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記憶の宮殿なんて脳内に持てないから、外部に記憶。


by sakanapo

スティーブン・キング「グリーンマイル」

グリーン・マイル〈1〉ふたりの少女の死
スティーヴン キング Stephen King 白石 朗 / 新潮社
ISBN : 4102193154
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再読。映画は見てないけど3時間くらいあるらしい。

連載小説の楽しみを味わってほしいと1ヶ月1冊*6回の
分冊方式で出版されたけど、我慢できそうにないので
完結してからボックス入りの6冊セットを買って一気読み。
このころ読んだ小説に暴力を正面から扱ったものが多く
作家のアンテナが共通して捉える「今」ってこういうもの
なのかなあ、と思った記憶がある。

ちなみに原書では6冊を1冊にまとめたペーパーバックが
出ていてこれまたお買い得。

キングお得意の刑務所ものながら、内容の暗さ・重さは群を抜く。
神というものが本当にこの世にいて、気まぐれに救いや受難を
ばらまいてるとしたらやりきれない。いっそ神なんておらず、
能力もただの遺伝子突然変異かなにかのせいで、全ては偶然の
産物であったほうが救われる。
それが当時の一読した感想。
キングは「呪いと救済の間に本質的な違いなどないのだ」と
表現してた。

この作品の成功はミスター・ジングルズにつきます。個人的にですが。
しっぽを足の前にくるりと回してちょこんと座って、
黒い水滴のような目でこっちを見つめるんですよハァハァ。

まぁほぼ刑務所内でカタがついてしまうとか、いろいろと
ご都合的な部分もありはしますが、私が何回読んでも泣けて
しまうくだりが2箇所あるのでこれをブクオフに売ることは
ないかなーと思う。

1)マウスヴィルの描写
処刑を控え、ミスター・ジングルズの行く末を案じるドラクロワを
安心させるために看守たちが創り出した街だけど、雲母のガラスとか
美しいんだよね・・・歌いかけるような文章もよくて、みんながその
共同幻想の世界に浸っていくようすがもうなんとも言えない。
その直後の急転直下の出来事の前だけに、はかない美。

2)コーフィの最後の祈り
意表を突く幼児言葉での祈りがぐっときます。
孤児施設かどこかで教えてもらったのか…それ以外に祈りの
言葉を知らない彼のこれまでの境遇を思ったり、さらに
「最後の時もおれのために祈ってください」でとどめ。

アラバマでのバス事故の描写はどう解釈するべきか。
まず思ったのが、あのシーンの台詞の「ジョン」を「神様」に
変えても完璧に成立するなぁと。ジョンはお前たちが殺したんだろwと
つっこみたいのは山々ですが。で、「救済と呪いに違いはない」
という述懐につながるわけです。うん、やっぱ神はいない方が
救われる気がする…

映画、イメージを明確にするにはよさそうだけど
いらんシーンとかあったらやだなぁ。
見たいような見たくないような。
by sakanapo | 2005-12-09 12:50 | スティーヴン・キング