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記憶の宮殿なんて脳内に持てないから、外部に記憶。


by sakanapo

夕凪の街 桜の国

夕凪の街桜の国
こうの 史代 / / 双葉社
ISBN : 4575297445



ヒロシマを題材に扱った漫画です。全1巻。
おととし頃には友人から良い評判を聞いてたのですが、今頃読みました。
ヴィジュアル的に悲惨な描写は一切といっていいほどなく、
表紙を見て分かるように絵柄はほのぼの系、とてもあっさりしています。
しかし、とても深い作品でした。

一読より二読、三読した方がいろいろ思うところの多い作品です。
自分の感受性の限界を試されているような。
例えば、冒頭で出てくるワンピースを皆実がムキになってまで
着たがらない理由。
お恥ずかしながら、私は3回読むまで気づきませんでした。
他にも帰り道に聞こえた妹の名前につい反応してしまう場面など
読み返さないと真の意味が分からない部分が多いです。
モノローグでの説明が少なく、描かれた情景から自分で情報を
読み取らないといけないんですよね。

ちなみに、解説ページで作者が「10年後に○○が倒れたのも原爆症の被害です、
説明不足ですみません」と書いているのですが、これもきっと読者から
「なぜ?」という疑問が多く届いて、注釈をつけざるを得なかったのでは
ないかと思います。ここまで知識が行き渡っていないんだ、とさぞびっくりされた
ことでしょう。その意味でも描いた意義は大きかったのでは。

映画化もされるようなので、これからタイトルを耳にする機会も増えそうです。
by sakanapo | 2007-02-22 10:45 | 読書日記