記憶の宮殿なんて脳内に持てないから、外部に記憶。


by sakanapo

北村薫編『謎のギャラリー 謎の部屋』

謎のギャラリー―謎の部屋
北村 薫 / 新潮社
ISBN : 4101373248
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こちらも好みだった作品についていくつかコメントを。

■都井邦彦「遊びの時間は終わらない」
警察と銀行が協力して行う銀行強盗対応訓練。犯人役の警官が
訓練の枠内(ここがポイント)で本気でろう城を始め、マスコミ含めて
現場は大混乱…
へりくつ抜きに面白い作品。シュールすぎ。
「死体」と書いた札を下げた人質や「空気」のカメラクルーがもうツボです。
映画も見てみたい度★★☆☆☆

■西條八十「領土」
すごく短い話だけど、うなっちゃう。夫はドアの外に、妻はコーヒーカップの
中にそれぞれ豊かな世界を持っている。人の世界の広さなんてぱっと見で
推し量ることはできないんだなと。でもこれを認めるとヒッキーに
「狭い世界に閉じこもってるんじゃねえ!」と言えなくなる。
骨牌=カルタ度★☆☆☆☆

■小沼丹「指輪」「黒いハンカチ」
A女学院の名物先生ニシ・アヅマ女史が探偵役を務めるまったりミステリー。
こんなシリーズがあるなんて知らなかったけど文句なしに面白い。
何よりも会話のしゃれた雰囲気とアヅマ女史のキャラがすごく素敵。
昼寝は大事だよ度★★★☆☆

■マージャリー・アラン「エリナーの肖像」
引っ越した屋敷にかかっていた一枚の肖像画が妙に気にかかるヒロイン。
描かれているのは正気を失い事故で死んだとされた女性エリナーだが、
実はその絵には彼女の悲痛な訴えが隠されていた。

エリナー自身は既に亡くなっているのにキャラが立ってること立ってること。
自分の死を見据えながら、いつか誰かに真相を見抜いて欲しいと
手がかりを隠した肖像画を描いてもらうその気持ちはいかばかりか。
ひとつひとつ手がかりの謎が解けるたびに愕然としつつ、
エリナーの勇気、知略に感服します。
エレノアじゃないんだね度★☆☆☆☆

■M・B・ゴフスタイン「私のノアの箱舟」
文章もさらっとしてるし絵も素朴な線なのになんでこんなに
しみじみできるんだろう。一度読んだだけでは見過ごしてしまいそう。
よくこういう作品を見つけてくるなあ。
「船の長さは300キュービットにするのだ」というお父さんの声が
部屋の中から聞こえてくるとか(神様のようだ)、さみしそうな目を
していたおもちゃの馬をよくなでてたらペンキがはがれてしまったとか、
箱舟のことで夫にからかわれたとか、お父さんが子供の頃に
作ってくれた箱舟のおもちゃにまつわるなんでもない
エピソードばかりなんだけど、箱舟にそういう思い出がぎゅっと
つまっていて、愛する人はすべて世を去ったけど
その思い出たちが晩年の自分をあたためてくれる…ええ話や。
一生の思い出を共有できるモノがあるっていいなー。
キュービットって何cm?度★★★★★

(正解は 137.16 メートル)
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by sakanapo | 2006-01-30 09:53 | 読書日記