記憶の宮殿なんて脳内に持てないから、外部に記憶。


by sakanapo

池澤夏樹「スティル・ライフ」

「雪が降るのではない。雪片に満たされた宇宙を、僕を乗せたこの世界の方が
上へ上へと昇っているのだ。静かに、滑らかに、着実に、世界は上昇を続けていた。」

スティル・ライフ
池澤 夏樹 / 中央公論社
ISBN : 4122018595
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学生時代、生協の本屋でふとこの本を買ってから
しばらく池澤夏樹にはまっていた。先日の芥川賞受賞作決定を
伝えるニュースで、彼が今の審査委員長だと知って隔世の感。
「真夏の朝の成層圏」も好きで、夏に海へ行くときなんかに
必ず持って行って読んでいたものだ。

「スティル・ライフ」は彼の芥川賞受賞作で、よく理系的と評される
作風がよく出てる作品。酒の入ったグラスを見つめて
「チェレンコフ光が見えないかと思って」とかね、もうどんだけ
かっこいいんだと。
冒頭の序文や、雨崎の海辺に座り込んで雪を眺める描写は
今読んでもしびれます。

ただ、佐々井が淡々と行う錬金術のような株マジックについては
今読み返すととことん環境が変わったなあ・・・と思う。
もし現在この話を書こうとしたら、彼はPC5台くらい用意して
期間限定でデイトレやるんだろうけど、なんでもネットで
できちゃうから話が一部成り立たない。
証券会社に口座持つのも売買の指示も、チャートを見るのも、
企業の財務状況チェックもぜんぶネットで可能だから
主人公の協力を必要とする部分って口座の名義を借りる
くらいじゃないかな。あとは一人でOKだもんね。

自分でも株をやるようになって、佐々井のセリフが一部実感を
持って来たところもあり、彼のやったことがどれくらい難しいか
分かってきたところもあり。
ちょうど証券会社から2005年の取引報告書が届いたけど
いくらプラス、って言われても稼いだ実感がないもんねー。
金銭的雪かき、みたいな感じ。

「チェレンコフ光」で口説いてみたくなる度★★★☆☆
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by sakanapo | 2006-02-01 09:31 | 読書日記