記憶の宮殿なんて脳内に持てないから、外部に記憶。


by sakanapo

宮部みゆき「楽園」

「模倣犯」の中心的人物だった前畑滋子が9年後に出会う
また別の事件のお話。






模倣犯はしごくまっとうな(ファンタジックなところのない、という意味で)
作品だったので、この作品もそうなんだろうと思い込んでいた。
帯にある「死体を透視する少年」というのも、きっと何がしか
あっと驚くような合理的な説明がつくんだろうな、と思っていたら
あっさりと「他人の記憶が見える少年だったんです」で拍子抜け。
まるで榎木津じゃんか。
いくら事務所が同じとはいえ、ちょっと京極夏彦に毒されすぎじゃないの、
と思ってしまったり。
でももともと「クロスファイア」の人でもあったし変でもないか。

この作品の良心というか、一番印象的な人物は敏子。
死んだ少年の母、いかにも「誰かのお母さん」という見た目で
言動もそれを裏切らない。要領は良くなく愚鈍にも見えるけれど
誠実に暮らしていこうとしている女性。
彼女が息子の真実を知りたいと願う気持ちからストーリーは展開
していくのだが、話が進むにつれて判明する彼女の生い立ちや
性格、それらを知るにつけ彼女の不幸がつくづく悲しい。
(しかしそこは宮部みゆき、最後には救いが!)

模倣犯ほどに群像ドラマ的なうねりはなく、どちらかといえば淡々とした
作品だったけれど読後感は良かった。
すいすいと最後までスピーディに読めるちょうどいい長さだったのでは。
ただ、彼女の作品は作中で流れる時間を実感するために読む側も
時間をかけて少しづつ読むのに向いてるような気がしていて
リアルタイムの新聞連載で読んで見たかった。
タイトルの「楽園」は最初から決めてたそうだけどちょっと牽強付会。
終章に説明があるけれど全然ピンとこなくて、そういうのは
いらなかったんじゃないかなと。

どうでもいいことですが作中「鳩の巣」というスナックが出てきて
ママさんの名前が鳩子。どうぶつの森やら米米クラブやら
いろいろ思い出してそのシーンは真顔で読めなかった。
[PR]
by sakanapo | 2008-01-10 19:29 | 読書日記