伊坂幸太郎「アヒルと鴨のコインロッカー」
2008年 01月 21日
思って読んだら意外とミステリーでもあったなぁというくらいの
心構えで読んだ方が幸せになれそうな気がした。
ミステリーというジャンルを念頭に置いて読むと
叙述なりなんなりのトリックをどうしても考えてしまう
スレた読者は、きっと作者にきちんとハメられることができないと思う。
ハメられてこその面白さが肝な作品なので、「ミステリー」と
銘打つこと自体がある種のネタばれになるのではないかしらん。
で、そのハメられ爽快感を味わえなかったスレた読者としては
その「肝」を抜いても楽しめる作品かというと、ビミョーでした。
軽妙なタッチの会話、嫌味なところのないキャラクターたちは
読んでいる最中の喉越しはとてもよいです。
ただ、キャラクターに深みがないというかライトノベル的というか
いかにもとってつけたような人間味というか…
河崎にしろドルジにしろ琴美にしろ麗子さんにしろ、造られた
キャラクターだなぁという印象が最後まで拭えませんでした。
そして作者のブータン礼賛がちょい鼻につく。
トリックに関係あるといえばあるんで、ブータンを登場させること
自体については何も文句はないんだけど。