エリザベス・コストヴァ「ヒストリアン」
2008年 02月 29日
舞台も時代もあちこちジャンプしまくるので複雑極まりない。
題材はドラキュラ。といっても実在したワラキア公ヴラド・ツェペシュの方。
ひょんなことで手に入れた不思議な本に導かれ、彼の遺体の行方と
それにまつわる謎を追い求める歴史学者たちの3代に及ぶ探索行を描く。
本が分厚さはかなりのもので、長時間読みふけることができるのが嬉しい。
その中でヨーロッパ史跡をぐるっとめぐるバーチャルグランドツアー気分や
虚実とりまぜた歴史ミステリーを追う歴史学者気分も味わえる。
題材が題材だけにちょっとオカルティックな趣もあり。
長いなりの重厚さは充分で、非常に読み応えありました。
ただ、どうにもついてけねーよ、な部分が。
1つは、ドラキュラの遺体の行方を追うロッシ教授の行方を追う
父の行方を追う主人公、という構成がまず混乱の元。図示すると…
ドラキュラ ← ロッシ教授 ← 父(+母) ← 主人公(娘)
トルコ、ハンガリー、ブルガリア、イギリス、イタリアなどなど舞台も様々に
移る中でそれぞれの時代の色々なエピソードが語られるのだが、
「あれ、これはロッシ教授の体験だっけ、父親だっけ?」と混乱することしばしば。
だから途中で伏線が張られていたところで覚えてないわけですよ…
またそれを後から探すのもとっても大変なわけで。
さらに、世界史-特にオスマントルコ周りの歴史に関する
ある程度の知識水準を要求する作品。最低限、ワラキアと
オスマントルコが激しく敵対していたことだけでも知っておきたい。
イエニチェリとかメフメト二世とか懐かしいわぁ。
山川の世界史用語集を脇に置いて復習しながら読みたかった。
ちなみに執筆は数年前のはずだけど序文の「読者へ」の日付は
「2008年1月」で、そこにつながる伏線もあったらしい。でも
もう分からなくていいや、探すの疲れました…