記憶の宮殿なんて脳内に持てないから、外部に記憶。


by sakanapo

カテゴリ:読書日記( 56 )

謎のギャラリー―謎の部屋
北村 薫 / 新潮社
ISBN : 4101373248
スコア選択: ※※※※


こちらも好みだった作品についていくつかコメントを。

■都井邦彦「遊びの時間は終わらない」
警察と銀行が協力して行う銀行強盗対応訓練。犯人役の警官が
訓練の枠内(ここがポイント)で本気でろう城を始め、マスコミ含めて
現場は大混乱…
へりくつ抜きに面白い作品。シュールすぎ。
「死体」と書いた札を下げた人質や「空気」のカメラクルーがもうツボです。
映画も見てみたい度★★☆☆☆

■西條八十「領土」
すごく短い話だけど、うなっちゃう。夫はドアの外に、妻はコーヒーカップの
中にそれぞれ豊かな世界を持っている。人の世界の広さなんてぱっと見で
推し量ることはできないんだなと。でもこれを認めるとヒッキーに
「狭い世界に閉じこもってるんじゃねえ!」と言えなくなる。
骨牌=カルタ度★☆☆☆☆

■小沼丹「指輪」「黒いハンカチ」
A女学院の名物先生ニシ・アヅマ女史が探偵役を務めるまったりミステリー。
こんなシリーズがあるなんて知らなかったけど文句なしに面白い。
何よりも会話のしゃれた雰囲気とアヅマ女史のキャラがすごく素敵。
昼寝は大事だよ度★★★☆☆

■マージャリー・アラン「エリナーの肖像」
引っ越した屋敷にかかっていた一枚の肖像画が妙に気にかかるヒロイン。
描かれているのは正気を失い事故で死んだとされた女性エリナーだが、
実はその絵には彼女の悲痛な訴えが隠されていた。

エリナー自身は既に亡くなっているのにキャラが立ってること立ってること。
自分の死を見据えながら、いつか誰かに真相を見抜いて欲しいと
手がかりを隠した肖像画を描いてもらうその気持ちはいかばかりか。
ひとつひとつ手がかりの謎が解けるたびに愕然としつつ、
エリナーの勇気、知略に感服します。
エレノアじゃないんだね度★☆☆☆☆

■M・B・ゴフスタイン「私のノアの箱舟」
文章もさらっとしてるし絵も素朴な線なのになんでこんなに
しみじみできるんだろう。一度読んだだけでは見過ごしてしまいそう。
よくこういう作品を見つけてくるなあ。
「船の長さは300キュービットにするのだ」というお父さんの声が
部屋の中から聞こえてくるとか(神様のようだ)、さみしそうな目を
していたおもちゃの馬をよくなでてたらペンキがはがれてしまったとか、
箱舟のことで夫にからかわれたとか、お父さんが子供の頃に
作ってくれた箱舟のおもちゃにまつわるなんでもない
エピソードばかりなんだけど、箱舟にそういう思い出がぎゅっと
つまっていて、愛する人はすべて世を去ったけど
その思い出たちが晩年の自分をあたためてくれる…ええ話や。
一生の思い出を共有できるモノがあるっていいなー。
キュービットって何cm?度★★★★★

(正解は 137.16 メートル)
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by sakanapo | 2006-01-30 09:53 | 読書日記
北村薫のミステリー館
北村 薫 / 新潮社
ISBN : 4101373299
スコア選択: ※※※


北村薫は「円紫さんと私」シリーズがかなり好きで
その作品でも文学への造詣が深いなーと感心しながら
読んでたので、彼が編んだアンソロジーなら期待できるなーと
ブクオフで購入。「謎」「こわい」「ミステリー館」と持ってて
「愛」だけ持ってないけど他意があるわけじゃなく見つからないだけ。

アンソロジーだから短編~中編なんだけど、知らない作家が
いっぱいで、一生で読める作品なんてほんと限られてるなあと
思ったり。
ミステリー館で印象に残ったものをいくつか。

■原倫太郎/原游「少量法律助言者」
これは卑怯!卑怯なんだけど笑ってしまう。要はWebサイトにあるような
自動翻訳で「一寸法師」を和→英→和と翻訳していったという設定ですが
(実際はかなり手が入ってるはず)あのかみあわなさ、シュールさが
たまりません。「一寸法師→a little law mentor→少量法律助言者」
なわけです。挿絵も秀逸。
特にウケたのが「まかりこすることを~→be able to makariko→
まかりこすることができる」。
和訳は変わっていないんで「ほう」と思って英訳見たらぶっとびましたw
他にも「かぐや姫-As soon as it smelled,princess
-それが臭いをかがれるとすぐにプリンセス」などの品があるようです。
電車の中で吹き出す度★★★★★

■奥泉光「滝」
宗教団体の修行として、10代の少年5人が苛酷な山岳行に挑む。
が、待ち受けていたのは神意に見せかけた人間の悪意だった。
肉体とともに精神の疲労が限度を越す中、リーダーの勲がとった行動とは。

これなんてボーイズラブ小説?という部分はさておき。勲=タッキーでイメージして
読みました。裕矢は柳楽優弥くんかな!緑と水にかこまれて爽やかに始まる
お話なのにどんどん暗く重くどろどろと…。
勲は手紙を読んでなお左端を引いたんじゃないかと思いますが。
止めを刺すのは大人しい奴度★★★☆☆

■ジェーン・マーティン「バトン・トゥワラー」
村上春樹訳。なんていうか、何事かを極めた者の語る言葉は深い。
経理部のサラリーマンだって年度末のPC画面を通して神が見えるとき、
あると思うなあ。
トゥワラーの女性が暗がりでスポットを浴びて語り始め、
バトンを残して退場していく構成が映像的に美しい。
読者に向けて文字通りバトンタッチって気分がよく出てる。
全裸流血デスマッチ度★☆☆☆☆
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by sakanapo | 2006-01-27 11:10 | 読書日記
ブライヅヘッドふたたび
イーヴリン ウォー 吉田 健一 / 筑摩書房
ISBN : 4480024514
スコア選択: ※※※※


「パイロットの妻」を読んでて、どうもジュリアという名のおばあちゃんに
違和感があるなと思ったら、この小説のせいで、私の中でジュリアって
いうと若い美人イメージだからだってことに気づいた。

なぜこの本を読んだかというと話はかなり前にさかのぼって。
学生時代の一般教養の英語の授業でイギリス文学専攻の成田先生が
とりあげたのがE.M.Forsterの「A Room with a View」。これを1年かけて
読んでいきました。そういえばペーパーバックを読むのに抵抗が
なくなったのってこの授業のおかげかもしれない。
で、この作品は映画にもなったしまぁ取り上げるのもわかるけど、翌年の
題材はなんとEvelyn Waughの自伝「A Little Learning」でした。
マイナーな作家な上に作品ならともかく、自伝かよ。
たぶん今でも未邦訳じゃないかな?
当時は彼の作品もひとつとして知らず、いきなり知らない作家の子供時代の
回想を訳させられて戸惑った覚えがあります。
ただ、読み進めていくと、ガラスかなにかについてだったと思いますが、
美しいものの描写がきれいだなという印象を持てたので、作品の方も
読んでみようとまず手にとったのが「ブライヅヘッドふたたび」でした。

あらすじはというと。
1920年代、オックスフォードに進学したチャールスはマーチメーン侯の次男坊
セバスチアンと出会い、その美しい外見、奔放な行動、純粋さに魅せられる。
カレッジや彼の屋敷であるブライヅヘッドで華やかな楽しい日々を過ごすうち
いつしか彼らは親友になった。
だが、家族や宗教に相克をかかえるセバスチアンが酒に溺れ破滅していくのを
チャールスはただ見ていることしかできなかった-

ジュリアはセバスチアンにうり双子の妹ですごい美人。後にチャールスは
彼女と不倫をしちゃいます。そのきっかけとなる状況がすごいんだこれが。
豪華客船で旅に出たら昔懐かしいジュリアとばったり。向こうは夫がいるけど
1人で乗っていて、チャールスは奥さんと一緒。ところが、すごい嵐に
巻き込まれ、乗客のほとんどは船酔いのため食事もとらず自室に
こもっちゃいます。
もちろんチャールスの奥さんも。が、なぜかジュリアとチャールスだけは
全く船酔いをせず、がらんとした船内をなんとなく2人ですごすうちに・・・
という展開。
池澤夏樹がこの場面について書いてるエッセイがどっかにあったなあ。
読書癖かな。人一倍船酔いしやすい私にはこういう不倫は無理ですw

セバスチアンのキャラクターは破滅型だけどやっぱり惹かれるものがある。
貴族という属性によるところも大きいんでしょうが、とことん浮世ばなれて
ます。熊のぬいぐるみにアロイシアスという名をつけて持ち歩き、
話しかけてるあたりゴスロリ少女のハシリと言えなくもない。
そして彼らがする優雅な遊びの数々!ワインセラーから高価なワインを
いろいろあけて、その味を
「最後に生き残った一角獣だ」「洞穴に住む預言者だ」なんて適当な文章で
表現していったり、白ワインと苺をバスケットにつめてドライブ先の野原で
飲んだり・・・
「苺が一籠と車とシャトー・ペラゲーの白葡萄酒がある。君がまだ飲んだ
ことはないものだから、飲んだことがあるふりをしても無駄だよ。苺と一緒
だと天国の味がする。」とか一度言ってみたいですよ!
ん、私が憧れる遊びって全部酒がらみか?

イギリスでは人気小説らしくグラナダTVでドラマ化もされたそうな。
邦題はずばり「華麗なる貴族」。プゲラ。
見てみたくて"Brideshead Revisited"DVD購入を検討中。
日本語字幕はもちろんなし!英語字幕もあるかどうか!
私が持ってる文庫の表紙はその映像を使ってるぽく、金髪男性が熊の
ぬいぐるみを持っています。
そういえば映画化の話はどうなっちゃったんだろ。

この作品はシリアスで耽美ちっくだけど、「ポール・ペニーフェザーの冒険」
は軽くて(もうペニーでフェザーですし)ブラックなのですよね。
どうもそっちの方がこの作家の持ち味らしいです。私はこちらのが好きですが。

カトリックの相克が理解できない度★★★☆☆
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by sakanapo | 2006-01-20 14:51 | 読書日記
パイロットの妻
アニータ シュリーヴ Anita Shreve 高見 浩 / 新潮社
ISBN : 4102158316



ハードカバーで出た頃に書店で手にとって20分くらい
ナナメ読みしたことが記憶にある。
出だし以外、内容は全く記憶にありませんが。
文庫になったのを見かけたので購入。

国際線パイロット、ジャックの妻キャスリンは
夫が勤務中のある日の夜中、見知らぬ男の訪問を受けた。
「ミセス・ライアンズですね?」
その言葉で全てを悟るキャスリン。「・・・いつ?」
夫が搭乗した機が海上で空中分解を起こしたという。
事故機パイロットの妻としてマスコミに追い回され、
会社側からも聴取を受けつつ娘マティと母ジュリアとともに
悲しみに耐えるキャスリン。やがて、ジャックの
不可解な行動が明るみに出て-

というのが序盤。
いま、第二章に入ったところです。
ジュリア-キャスリン-マティ の女系3代トリオと
そのお世話係となった航空会社の組合の人間、ロバートを
中心に話が進んでいますが、ジャックの謎が徐々に浮上して
まいりました。

ジャックが機内に持ち込んだものとは。
ジャックが母の生存を妻に隠していた理由。

謎はさらに増えるのでしょうか。

翻訳ものですが特に航空専門用語が飛び交うわけでもなく
読みやすい方です。翻訳の高見さんが手慣れているおかげかも
しれません。
読み終わったら補足予定。

----------------------
久々に寝坊した。仕事に遅れはしなかったけど
朝食に手がかけられず、ぬこと戯れる時間も削られた。
せっかく2匹ともにょろにょろ起きてきたのに。
ひと月で一番眠い時期だから仕方ないんだけど。

ネタばれ含む感想。
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by sakanapo | 2006-01-18 10:07 | 読書日記
椿山課長の七日間
浅田 次郎 / 朝日新聞社




新聞の連載小説って意外に豪華な作家が書いていたりする。
これも朝日新聞夕刊の連載だったらしい。
新聞の連載小説の1回分ってとても少ないので
面白い話であればあるだけリアルタイムで読むと
欲求不満が募りそうだなあ。

百貨店婦人服第一課の課長、椿山はセール初日に取引先との
宴席で倒れ、そのまま急死してしまう。ところがこの世とあの世の
境のお役所で「邪淫の罪がある」と言われ、それへの不服と
残した妻子、仕事が心配だという理由でその場での成仏を
拒み、7日間の期限つきで現世に戻れることとなった。
ただし、元の自分とは似ても似つかない美女の姿で。
期限厳守、復讐禁止、正体秘匿という3原則を破れば
「こわいこと」になるという。
同様に現世に戻るヤクザ(→大学教授風に変身)と少年
(→少女に変身)も加わって、三者三様の人間模様が描かれるが
やがてそれぞれのドラマが1つに絡み合って…

というのがおおよそのあらすじ。
人情もの、任侠道、コメディタッチと作者が自分の得意な
フィールドで楽しんで書いてるという雰囲気が伝わって
くるようなお話だった。
もちろん軽いだけじゃなく、さすがにそこは浅田節。
要所要所で涙腺を刺激させられる。
中でも蓮ちゃんととある夫婦の対面シーンが一番きた。

TVドラマ化もされるようだが、椿山の父親と佐伯知子を
どれだけかっこよく見せられるかが肝な気が。
「100ある恋愛のうち99は偽物」に続く一連の台詞はわりと
好評なようだけど、簡単に名台詞だなんて言えない気がする。
あれは報われなかった恋について、傷つきはしても後悔していないと
思っていることを示すためにああいう表現になってしまったけど、
本当の恋愛は相手に何も求めないことだと知子が真剣に信じてる
わけじゃないと思う。結果的にそうなってしまったこの愛し方を
「誇りも恋心もいらない」といいつつ誇りに思ってるんじゃないかなあ。
この場面では、知子にそういうことを言わせてしまった椿山の
いたたまれなさの方に関心がいってしまった。

気づいたら脳内で勝手にキャスティングしていたので
公表しちゃおう、脳内キャスト。

椿山和昭:西田敏行(かっこいい系じゃない人希望)
椿山由紀:天海祐希(意外と思い当たらない。誰がいいんだろう)
和山椿:川原亜矢子(キマリすぎかなあ。山口智子でもいいなあ)
佐伯知子:沢口靖子(デパガ、似合いそう)
椿山の父:三國廉太郎(やべえ、釣りバカ日誌コンビ親子だw)
武田勇:佐藤浩市(かっこよすぎだけど…)
蓮ちゃん:日立のCMの女の子

知子=薬師丸ひろ子 というキャスティングを
考えてらっしゃる方
も見かけた。うん、なるほど、それもアリだな~。
芯の強そうな感じがする人がいいんだよねー、
知子は。
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by sakanapo | 2006-01-16 16:04 | 読書日記

浅田次郎「沙高楼綺譚」

沙高樓綺譚
浅田 次郎 / 徳間書店
ISBN : 4198923299


「沙高楼にようこそ。
今宵もみなさまがご自分の名誉のために、また、ひとつしかないお命のために、
あるいは世界の平和の秩序のためにけっして口になさることのできなかった
貴重なご経験を、心ゆくまでお話下さいまし。」


激しく日本版奇譚クラブ。ホステス(ホスト?)は美輪明弘以外の
イメージ持てませんね。どの話もちょっと消化不良っていうか、
各話にある謎の種明かし的な解釈が中途半端で腑に落ちない。
あえて一番を挙げろと言われれば「百年の庭」。
全然暗い話だと思わなかったんですが。
これ好きって人、少数派なのかなあ。
一番人気は「立花新兵衛~」だろうな。

蒼穹の昴ばりの長編が読みたいです、安西先生。
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by sakanapo | 2005-12-05 12:47 | 読書日記