記憶の宮殿なんて脳内に持てないから、外部に記憶。


by sakanapo

筒井康隆「驚愕の曠野」

驚愕の曠野―自選ホラー傑作集〈2〉
筒井 康隆 / / 新潮社
ISBN : 4101171424



とりあえず表紙かっこいい。

高校時代に部活仲間と共に筒井に触れて、なぜか部活の顧問の先生が
筒井スキーだったため先生生徒入り乱れて本を貸し借りしあうようになり、
かなりハマっていった記憶が。
「バブリング創世記」を暗記しようと無駄な努力をしていた夏が懐かしい。
ドンドンはドンドコの父なり。ドンドンの子ドンドコ、ドンドコドンを生み、
ドンドコドン、ドコドンドンとドンタカタを生む(ry
音読してると段々ハイになっていきます。あの衝撃は今も忘れられない。

基本的にドタバタでグロなので今読み返すとキツイものもあり、一度読むと
しばらく読み返したいとは思わないのですが、たまーに読みたくなります。
表題作が一番好き。

お得意のメタフィクション構造。
舞台は「199X年、世界は核の炎に包まれた・・・世紀末救世主伝説」+
仏教的世界観、といった感じ。
暴力が支配するすさんだ荒野に生きるのは、みな後ろ暗い所のある旅人達で、
自分ひとり生き延びるためなら人を蹴落とし利用することもよしとする。
旅人たちの短い友情、生命の危機、殺し合い。
そして死んでも一段下のおんなじような世界に生まれ変わり、どんどん魔物と
化していく自分を自覚するばかりの彼ら。
死んでもここからは抜け出せない、重層構造の地獄。

・・・という本をあずまやで子供たちに読み聞かせる「おねえさん」の描写が
所々で挟まります。やがておねえさんは亡くなり、本を読む役目は子供たちの
1人が受け継ぐことに。

しかしおねえさんも登場人物のひとりの前世?であったようで、やがて物語に
猫として登場し、やがては愛する男も喜んで殺す魔物へと変貌します。
そして本の中に、おねえさんと子供たちの骨が転がる
あずまやに積まれ、ボロボロに朽ち果てた本の描写が出てきます。
ループループ、超ループ。

この構造もさることながら、こんな退廃的で倫理のない世界なのに
キャラがいちいち魅力的でひきつけられてしまう。
鹿歩と五英猫のくだりが一番好き。

自分用メモ:
おねえさん(五英)→五英猫→玉→ネズシ
[PR]
by sakanapo | 2007-06-10 22:52 | 読書日記
ハンニバル・ライジング 上巻
トマス・ハリス / / 新潮社
ISBN : 4102167064





映画の話を最初に知ったので、「おいおいハリウッドそんなにネタ切れなのかよ」
と思ったのですが、ちゃんとトマス・ハリスが本書いてたのですね。
一応「レッド・ドラゴン」からのファンなので読まなくては、と思ってたのですが
今頃になってようやく読みました。

★感想

・物語の冒頭、レクター父の台詞「急がないと、シモネッタ」
 で吹く。
 ロシア語通訳の米原万里さんの書いた「ガセネッタとシモネッタ」を読んでたので
 もう下ネタとしか読めない。

・冒頭の宮本武蔵の水墨画で予感はしてたのですが、日本趣味大爆発。
 しかもなんか「エーマジっすか」と言いたくなる扱い。
 レクターが和歌詠んだり伊達政宗の鎧着たり、何の注釈もなく乱れ飛ぶ
 「小野小町」 「与謝野晶子」といった単語。
 あれ、これって日本人の書いたレクターもののファンフィクションでしたっけ??
 と何度も表紙を確認してしまう。
 解説にもありましたが、この作品を一番楽しめるのは日本人でしょう。
 ちなみに映画で日本女性の「紫夫人」を演じるのはコン・リーだそうで。
 せっかく(間違ってる部分もありますが)日本文化の粋を体現し語らせる
 という役なので、歌舞伎畑で英語の堪能な人にでも演じてほしかったところだな、
 と思うのは大河で武田晴信を演じる市川「カピバラ」亀治郎贔屓の
 たわごとでしょうか。

・「記憶の宮殿」のコンセプトがとても好きなのですが、今作ではその萌芽が
 語られていました。ちょっと嬉しい。家庭教師のヤコフ先生から受け継がれた
 コンセプトだったんですね。
 全ての記憶を宮殿の中の展示物と言う形で脳内に整理する。
 憧れます。

・「ハンニバル」でも出てきましたが、レクターの妹ミーシャの死にまつわる
 復讐ドラマが今回のメインテーマです。ただ、前作で出てきたミーシャの乳歯の
 エピソードがあっさり否定されてちょっとびっくり。なぜ??

前作に比べると全体的に軽いタッチなのは否めませんが、そこそこ楽しめました。
映画は見る気なし。
[PR]
by sakanapo | 2007-05-20 16:04 | 読書日記

梨木香歩 2篇

からくりからくさ
梨木 香歩 / / 新潮社
ISBN : 4101253331




織物、染物、能面、植物などあれこれを語る梨木節は相変わらず
炸裂していてコレだよコレ、という部分はもちろんありますが
このお話は結構色々と生々しい感情が溢れていてちょっと怖い。
女4人の共同生活でそこを省いて書けるわけもないだろうけど、
ちょっとさわやかさには欠けるかな。
キングばりに最後はドカーンでびっくり。
そして、解説の最後に池澤夏樹の言葉が唐突に引用されているのに苦笑。
まぁ、いかにも彼が言いそうなことだけれど。

家守綺譚
梨木 香歩 / / 新潮社
ISBN : 4101253374




先日の新聞でこれに出てくる「セツブンソウ」の写真を初めて目にした。

うちも今たまたま、広い庭のある、戦前に建てられたんでは
なかろうかと思うくらい古い家に住んでるのでちょっと親近感がある
お話でした。惚れてくれるサルスベリも河童もいないけれど、
植物の季節ごとの移り変わりや、鳥や猫などの訪問者を
目にするのはやはり何とはなしに嬉しいものです。

今ちょうどふきのとうも庭のあちこちで顔を出しているので
天ぷらだけじゃなくてふきみそも作ろう!と決意を新たにしました。
[PR]
by sakanapo | 2007-02-22 11:06 | 読書日記
謎のギャラリー―謎の部屋
北村 薫 / 新潮社
ISBN : 4101373248
スコア選択: ※※※※


こちらも好みだった作品についていくつかコメントを。

■都井邦彦「遊びの時間は終わらない」
警察と銀行が協力して行う銀行強盗対応訓練。犯人役の警官が
訓練の枠内(ここがポイント)で本気でろう城を始め、マスコミ含めて
現場は大混乱…
へりくつ抜きに面白い作品。シュールすぎ。
「死体」と書いた札を下げた人質や「空気」のカメラクルーがもうツボです。
映画も見てみたい度★★☆☆☆

■西條八十「領土」
すごく短い話だけど、うなっちゃう。夫はドアの外に、妻はコーヒーカップの
中にそれぞれ豊かな世界を持っている。人の世界の広さなんてぱっと見で
推し量ることはできないんだなと。でもこれを認めるとヒッキーに
「狭い世界に閉じこもってるんじゃねえ!」と言えなくなる。
骨牌=カルタ度★☆☆☆☆

■小沼丹「指輪」「黒いハンカチ」
A女学院の名物先生ニシ・アヅマ女史が探偵役を務めるまったりミステリー。
こんなシリーズがあるなんて知らなかったけど文句なしに面白い。
何よりも会話のしゃれた雰囲気とアヅマ女史のキャラがすごく素敵。
昼寝は大事だよ度★★★☆☆

■マージャリー・アラン「エリナーの肖像」
引っ越した屋敷にかかっていた一枚の肖像画が妙に気にかかるヒロイン。
描かれているのは正気を失い事故で死んだとされた女性エリナーだが、
実はその絵には彼女の悲痛な訴えが隠されていた。

エリナー自身は既に亡くなっているのにキャラが立ってること立ってること。
自分の死を見据えながら、いつか誰かに真相を見抜いて欲しいと
手がかりを隠した肖像画を描いてもらうその気持ちはいかばかりか。
ひとつひとつ手がかりの謎が解けるたびに愕然としつつ、
エリナーの勇気、知略に感服します。
エレノアじゃないんだね度★☆☆☆☆

■M・B・ゴフスタイン「私のノアの箱舟」
文章もさらっとしてるし絵も素朴な線なのになんでこんなに
しみじみできるんだろう。一度読んだだけでは見過ごしてしまいそう。
よくこういう作品を見つけてくるなあ。
「船の長さは300キュービットにするのだ」というお父さんの声が
部屋の中から聞こえてくるとか(神様のようだ)、さみしそうな目を
していたおもちゃの馬をよくなでてたらペンキがはがれてしまったとか、
箱舟のことで夫にからかわれたとか、お父さんが子供の頃に
作ってくれた箱舟のおもちゃにまつわるなんでもない
エピソードばかりなんだけど、箱舟にそういう思い出がぎゅっと
つまっていて、愛する人はすべて世を去ったけど
その思い出たちが晩年の自分をあたためてくれる…ええ話や。
一生の思い出を共有できるモノがあるっていいなー。
キュービットって何cm?度★★★★★

(正解は 137.16 メートル)
[PR]
by sakanapo | 2006-01-30 09:53 | 読書日記